美術品投資が流行っている理由とは?知っておきたいポイント4つ

美術品投資が流行っている理由とは?知っておきたいポイント4つ

鑑賞用、または大切なお客様を接待するためにも、美術品をコレクションしていきたいと考えている方は多いだろう。また、気に入って集めた美術品が資産となるなら、これ以上のことはない。

今回は、美術品投資のメリットと節税対策、税法上の注意点を説明する。

なお、本記事において、美術品は販売目的で購入するのではなく、あくまでも鑑賞用として取得し、投資するものとして記述する。

 

美術品投資のメリットとは?

美術品投資のメリットとは?

美術品投資とは、購入した美術品を高値で売却し利益を得るという投資方法だ。美術品を資産として保有する人は多くはないが、かつて某知事が美術品による財テク手法を明かしたことで話題になった。それでは美術品投資によるメリットを紹介していこう。

 

キャピタルゲインが得られる

美術品を購入し保有し続けることで配当などインカムゲインを得られるようなことはない。しかし、美術品は時の経過とともに値上がることはよくあり、売却することで利益を得ることができる。

例えば、数年を経てその作品にプレミアが付く場合や、作家が有名になった場合などには、購入時の価格より倍以上の値段が付くだろう。有名になる前の作家による作品なら価格が安いので、好みのものをまとめて購入することができるだろう。

そして、価格が上がったときに何点か売れば利益を得ることができる。しかし、作家の評価が定まるのに数十年かかる場合や、そもそも作品自体にそれほどの価値がなく売却しても値段が付かない場合もありうる。また、通常よりも高値で購入してしまうなどキャピタルロスを被る場合もある。投資目的で美術品を購入するなら厳密な調査と選別が必要だ。

 

条件を満たせば減価償却できる

2015年1月1日の美術品等についての減価償却資産判定の改定により、以前に比べて美術品を経費に算入しやすくなった。

減価償却とは、法定使用期間をもとに取得価格を分割し使用期間に渡って経費化する会計処理だ。

これまでの法令では、購入価格が1点につき20万円(絵画にあっては、号2万円)未満の美術品しか経費にすることができなかった。しかし改定後、1点100万円未満の美術品は原則、減価償却等により経費にすることが認められた。100万円以上の美術品であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」においては、減価償却により経費にすることができる。

「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、会社のロビーやホールのような不特定多数の者が利用する場所に展示し、時の経過とともに退色や摩耗により価値が減少するものをいう。

つまり、利益が出ている企業が会社で美術品を購入し、応接室など多くの人が利用する場所に展示すれば、経費として認められるのだ。

ただし、時の経過によりその価値の減少しない古美術品、古文書、出土品、遺物など、歴史的または希少価値があり代替性のないものは100万円未満であっても減価償却することはできない。

 

鑑賞用として

美術品の最大の目的は鑑賞である。メリットを金額に表すことはできないが、気に入った美術品を展示し日々鑑賞することで心が癒され仕事に集中できるなら、無限大の価値を秘めていると言っていいだろう。

また、センスの良い美術品を展示すれば、職場環境の向上や、顧客や取引先に対するおもてなし、さらにイメージアップにもつながる。美術品には他の投資商品とは違い、人を癒す力を持っている。

 

美術品購入が節税に繋げやすくなった理由

美術品購入が節税に繋げやすくなった理由

美術品購入が節税に繋げやすくなった背景には、美術品の多様化と経済状況の変化による法改正が挙げられる。改定内容とその経緯を見ていこう。

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従来の美術品等についての減価償却資産の判定

従来、美術品を減価償却資産とすべきかどうかの判断は極めて困難であったため、一種の外形基準として、いわゆる美術関係年鑑等に登載されている者は一応プロの作者として通用するものとみなし、その者の制作に係る書画、彫刻、工芸品等は、原則として減価償却資産には該当しないこととしていた。

しかし、この基準だけで全てを律しきれるものではないため、取得価額が1点20万円(絵画においては、号2万円)未満であるものについては減価償却資産と取り扱うことができるとしてきた。

しかし、この通達が制定されてから30年以上を経過し、美術品等の多様化や経済状況の変化により、美術品の取引実態がこの基準とは乖離してきたと考えられることから、その実態に応じて取扱いの見直されることとなった。

 

2015年1月1日以降の美術品等についての減価償却資産判定

古美術品、古文書、出土品などのような歴史的価値または希少価値を有し、代替性のないものについては、「時の経過によりその価値の減少しないもの」とし、従来の取扱いを変更することなく、減価償却資産には該当しない。

一方、古美術品、古文書等以外の美術品について、まず、従来の美術関係の年鑑等による登載有無の基準は廃止。次に、取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であれば減価償却資産と取り扱うことができると取り扱っていた点について、昨今の取引の実態に照らせば、金額基準として低すぎることから見直し。

この20万円基準は、もともと法人の事務負担の軽減を目的に設けられている法人税法上の少額減価償却資産制度に準拠して定められていたが、新鋭作家のデビュー作が1点60万円~80万円で取引される実態にあることや、市場による一定の評価を得ることができる作者かどうかは一般に作品の価格が100万円を超えるかどうかで評価することができるといった専門家の意見等を踏まえ、今回の改正案では取得価額が1点100万円以上のものについて、原則として減価償却資産には該当しないと整理することとし金額基準の引上げを行った。

絵画においては号当たり2万円未満の基準を設けていたが、これも廃止して他の美術品等と同様、取得価額が1点100万円以上かどうかで判断することになった。

これらの改定により法人や個人事業主が美術品を経費化しやすくなり、美術品による節税が進んでいる。

 

美術品で節税を行う条件は4つ

美術品で節税を行う条件は4つ

すべての美術品が節税できるわけではない。節税できる美術品の条件とその償却方法をみていこう。

 

古美術品、古文書等に該当しない

前述のとおり、「時の経過によりその価値の減少しないもの」は金額にかかわらず減価償却資産にあたらないとしている。つまり、古美術品、古文書、出土品、遺物のような歴史的価値または希少価値があるものは含まれない。

 

1点あたり100万円未満の場合

1点あたりの金額が100万円未満で、前項「古美術品、古文書等に該当しない」の条件を満たす美術品は減価償却資産にすることができる。1点あたりの金額とは美術品本体のみの価格ではない。この金額には購入手数料や送料や設置費用、保険料などの諸費用や、絵画を飾る額縁代、オブジェを展示するガラスケースなども含まれる。美術品だけの価格ではなく付随費用も併せて100万円未満なので注意しよう。

法定耐用年数は次の通りだ。

室内装飾の絵画や陶磁器など 8年
金属製の彫刻など 15年

美術品の減価償却方法は、耐用年数に渡り取得価額を定額または定率により按分し経費にすることができる。

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1点あたり100万円以上の場合

1点あたりの金額が100万円以上の場合は原則、減価償却資産とすることはできない。

しかし、法人税法や所得税法等の通達によると、1点あたり100万円以上でも「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は減価償却ができるとしている。時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、次の三つすべてを満たす美術品をいう。

①会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。

②移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。

③他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

一部の人しか鑑賞できない、例えば社長室に展示する場合などには減価償却資産とすることはできないだろう。

 

中小企業なら1点あたり30万円未満

中小企業や個人事業主ならば、1点あたり30万円未満の美術品は少額減価償却資産として一括償却することができる。ただし、先述した通り、1点あたりの金額は購入手数料や送料などの諸費用も含んで30万円未満となる。また、少額減価償却資産が適用できる上限額は1事業年度に300万円までとなる。

美術品で節税する条件をまとめると次の表の通りだ

100万円以上 100万円未満 30万円未満

(中小企業等)

原 則 減価償却資産 少額減価償却資産
時の経過によりその価値が

減少しないもの

時の経過によりその価値が

減少することが明らかなもの

減価償却資産 減価償却資産 少額減価償却資産

 

美術品譲渡の際に抑えておくべきこと

美術品譲渡の際に抑えておくべきこと

美術品を譲渡するとき、つまりキャピタルゲインを得るとき、抑えておきたい税制上のポイントをみていこう。

 

法人の場合

美術品販売を業としない法人が、社内に展示してある美術品を販売した場合、売却時点の帳簿価額と売却価額との差額を固定資産売却益(または固定資産売却損)として雑収入(または雑損失)として処理する。この時、売却にかかる諸費用は経費として差し引くことができる。

 

個人(個人事業主を含む)の場合

美術品販売を業としない個人が美術品を売却した場合は譲渡所得となる。税法上の譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為をいい、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済なども含まれる。

 

譲渡価格が30万円以下の場合

譲渡所得の中でも、家具、什器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得は課税されない。絵画や書画、骨とうなどの美術品であっても、1点または1組の価額が30万円以下の場合、生活動産の扱いとなり非課税となる。
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譲渡価格が30万円を超える場合

貴金属や宝石、書画、骨とうなど美術品で、1点または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税対象となる。

課税方法は譲渡する資産の種類により異なるが、土地や建物に関しては分離課税、美術品などその他の資産に関しては総合課税となり、給与所得や事業所得などと合算される。

所得税率はご存知の通り超過累進課税で、課税所得に応じ5%から45%の税率を乗じ所得税額を計算する。譲渡所得は所得税に影響を与えるだけでなく、個人住民税や国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料も増額することになる。

 

譲渡所得の計算方法

譲渡所得には、短期譲渡所得と長期譲渡所得があり、所有期間が5年未満の場合、短期譲渡所得、5年以上の場合、長期譲渡所得という。総合課税の譲渡所得の金額は次のように計算し、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になり、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になる。

譲渡所得の金額 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)- 50万円

取得費とは、一般に購入代金であり、購入手数料や設備費、改良費なども含まれる。ただし、使用や期間が経過することによって減価する資産にあっては、減価償却費相当額を控除した金額となる。

譲渡費用とは、売却手数料など売るために直接かかった費用である。

譲渡所得の特別控除の額は、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円する。譲渡するたびに50万円控除できるわけではない。その年に短期と長期の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引く。なお、譲渡益の合計額が50万円以下のときは、その金額までしか控除できない。

例えば、50万円で購入した絵画を5年未満で売却し、譲渡価格が200万円、売却時の諸費用が20万円である場合、総合課税の譲渡所得の金額は次のようになる。

200万円 - (50万円 + 20万円)-50万円 = 80万円

金額は同じで所有期間が5年以上の場合、総合課税の譲渡所得は次の通りだ。

(200万円 - (50万円 + 20万円)-50万円) ÷ 2 = 40万円

所有期間の違いにより課税所得が大きく変わる場合があるので、譲渡価格が高額になりそうなとき、5年以上所有した方がよいだろう。

 

譲渡にかかる課税区分早見表

30万円以下 非課税
30万円以上 所有期間が5年未満 短期譲渡所得
所有期間が5年以上 長期譲渡所得

 

取得費がわからない美術品を譲渡した場合

美術品を譲渡したが、相続や贈与などにより取得したため取得費がわからない場合がある。また、自分で購入したが、領収証を紛失したため取得価格がわからない場合もあるだろう。取得費がわからないとき、税法では譲渡金額の5%を取得費とすると定めている。

例えば、取得費不明の絵画を200万円で譲渡した場合、取得費は10万円となる。譲渡費用が20万円の場合、総合課税の譲渡所得の金額は次の通りだ。

200万円 - (10万円 + 20万円) - 50万円 = 120万円

 

まとめ

今回は美術品投資と節税対策に活用できる減価償却制度、譲渡時のポイントについて紹介した。堅苦しい仕事場に絵画や彫刻を展示すれば、雰囲気は一変するだろう。

条件を満たせば美術品を経費で落とすことができる。また、美術品は時間の経過とともに値下がることが少なく、売却すればキャピタルゲインを得られるだろう。

この記事をきっかけに美術品投資に興味を持ち、読者の暮らしが豊かになれば幸いだ。

【記事執筆】富田FP事務所 代表 ファイナンシャルプランナー
2019年度MDRT成績資格会員(8年連続MDRT成績資格会員)
ゴールドマン・サックス証券会社等、複数の金融機関にて勤務し、金融業界のノウハウを学ぶ。2007年 独立して、株式会社フォーチュンフィールド設立。富田FP事務所として、独立系FP、独立系IFAを含め、証券会社、保険会社、保険代理店、にて金融業界の知識を活してプロフェッショナルの事業を行う。

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