経営者、個人事業主の代表的な税金対策イデコ(ideco)とは?

経営者、個人事業主の代表的な税金対策イデコ(ideco)とは?

多くの所得を抱える経営者や個人事業主の多くはイデコを利用している。企業の社会保険に 加入できないこれらの人は、無対策だと税負担が重くなってしまうからだ。

このイデコから、加入者の多くの方が選択していた「元本確保型」の商品が消える可能性が出てきた確定拠出年金に関する法律が変わり、それまで最低1本は元本確保型の商品を用意する義務が無くなったからだ。

事実、ネット証券最大手のSBI証券はすでにイデコから元本確保型商品が消える可能性について案内している。

※SBI証券 運用方法の選定・提示に関する基準の見直しに伴う除外予定ファンドのご案内

https://site0.sbisec.co.jp/marble/multiget/rightmenu/visitor.do?Param10=search_dc&Param9=dc_info180810_01.html&Param8=info&Param7=dc&Param6=dc.info

特に、イデコに加入している経営者や個人事業主はその影響が大きい。2017年からイデコには原則20歳以上の国民は全員加入できるようになったが、経営者や自営業者などの1号被保険者は最大拠出額が他と比べ多いからだ。

イデコ加入者の被保険者ごとの年間最大拠出額は以下の通りだ。経営者や個人事業主の年間拠出可能額は最大で他の加入者の約5.6倍であり、イデコから元本確保型が消える影響はより大きいだろう。

〇加入被保険者ごとのイデコ拠出可能額

被保険者の種類 年間拠出可能額
1号被保険者(経営者、個人事業主など) 最大年間816,000円
2、3号被保険者 最大年間144,000~276,000円

※2号被保険者 = 主に会社員、公務員

3号被保険者 = 専業主婦など、2号被保険者の被扶養加入者

イデコ加入者、特に拠出額が相対的に大きい経営者や自営業者にとって、運用商品から元本確保型が消える影響は大きい。

この記事では、イデコから元本確保型が消える影響とその対策についてお伝えする。

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イデコの概要

イデコの概要

そもそもイデコとは個人向けの「確定拠出年金」の愛称である。確定拠出年金とは「国民年金」や「厚生年金」などの公的年金に加えて上乗せする私的年金の1つで、それまで主流だった「確定給付年金」と対になるものだ。

給付額(受取り額)が確定しているのでなく拠出額(支払い額)が確定しており、給付額はその運用次第で変化する。

それまで企業年金として確定給付年金を用意していた企業は、昨今の低金利の影響を受け組合と約束した給付額を自社企業年金の運用のみで用意することが難しくなった。その埋め合わせを行うため企業の負債が増え、企業の負担となっていた。

このメカニズムは日本航空の破綻の一因となったことで有名だろう。このように、確定給付年金を企業年金として導入している企業の負担が社会問題になった。

この負担を減らす目的で確定拠出年金が注目を浴びた。確定拠出年金による給付額は運用に応じ決定され、その責任は加入者(被雇用者)に転嫁される。結果として企業は将来給付額が想定より大きくなるリスクを無くすことが出来、企業年金の企業負担を減らす手段として注目を浴びたのだ。

確定拠出年金には個人型の他に企業型があり、「401k」の名前で先に浸透していた。イデコは全国民が個人型確定拠出年金に原則加入できるよう法改正されたのに合わせ、その普及を狙い愛称が決められた。

確定拠出年金は加入者側にもメリットがある。確定拠出年期には企業型と個人型があると述べたが、その双方とも拠出金の全額が所得控除になるため節税の効果が高いのだ。

例えば所得税と住民税合わせ30%の税率が掛けられている方が毎年20万円イデコに拠出すると、毎年6万円の節税となる。拠出金に税率を掛けた金額が節税リターンとなり、ただ貯蓄を行うより有利に資産形成が出来る

この例で仮に30年続けると、元本600万円に対し、節税リターンの合計は180万円となる。

※あくまで所得控除であり、所得が無い年や住宅ローン減税などで税金が発生しない年はリターンはない。

経営者や個人事業主はイデコ同様に拠出金が全額所得控除になる「小規模企業共済」と併用し節税を図ってきた。

イデコと小規模企業共済と合わせると最大165万6,000円の所得控除になり、先程の例だと1年に約50万円もの節税リターンを受けられる。30年の合計では約1,500万円だ。

イデコでは拠出金の運用方法は加入者の裁量で決められる。加入者は拠出金を定期預金などの元本確保型商品か、投資信託などのリスク商品どちらで運用するか選択する。

節税リターンを主たる目的としてイデコに加入してきた方にとって、元本確保型が消える影響は大きい。投資の知識が無くとも、元本確保型さえ選んでいれば節税の恩恵が受けられたからだ。

事実、イデコ加入者の多くは元本確保型を選択してきた。イデコを運営している国民年金基金連合会によると、イデコ加入者の約64%は拠出先として元本確保型を選択している。

※国民年金基金連合会 確定拠出年金統計資料(29ページ)

https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/statistics_2903.pdf

これは、イデコ加入者の多くは節税や老後資金の形成を第一の目的としており、運用には特に期待していないからだろう。

しかし、イデコに関する法律が改正され、この元本確保型の商品が消える可能性が出てきた。

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改正された法律

改正された法律

2018年5月1日に施行された「確定拠出年金制度等の一部を改正する法律」により、イデコから定期預金などの元本確保型商品が消える可能性が出てきた。

これまでイデコを提供する金融機関は「3本以上、内1本は元本確保型」の商品を用意する義務があった。このルールがあったため、どの金融機関でイデコを行っても必ず元本確保型の商品を選択することが出来た。

しかし今回の改正で、このルールが変更された。イデコを行う金融機関は元本確保型商品を用意する義務が無くなり、「リスク・リターンが異なる3本以上の金融商品」を用意すれば良いということになった。

また商品数に上限が設けられ、36本以上の金融商品を提供することは禁じられた。

厚生労働省 確定拠出年金制度等の一部を改正する法律の主な概要(平成30年5月1日施行)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192886.html

このため、すでにイデコで36本以上の商品を提供してきた金融機関は商品数を少なくする作業が必要で、その猶予期間は2023年までである。この動きの中で定期預金などの元本確保型の商品をイデコから外す事業者が出てくる。

先述したSBI証券がその1つだ。

イデコ加入者の多くはSBI証券を利用しているだろう。SBI証券は口座数が400万口座を超え、口座数ではネット証券首位だ。国内の売上シェア2位の大和証券すら超え、売上首位の野村證券の背後を捉えている。

※SBI証券 2018年3月期 決算資料(6ページ)

https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/irpress/kessanshiryou_171026.pdf

経営者や個人事業主の多くも同社のイデコを利用していると思われる。

先述したとおり、今回法改正された影響でSBI証券はイデコの運用商品から元本確保型が姿を消す可能性をアナウンスしている。

SBI証券はイデコ加入者に個別に郵送でアナウンスしており、反対票が加入者の3分の1以上集まらないと元本確保型が消える旨を通知した(SBI証券の場合、返送しない場合は賛成票となる)。

 

35本以下の金融商品で、かつ元本確保型を提供するイデコ事業者に変更する

35本以下の金融商品で、かつ元本確保型を提供するイデコ事業者に変更する

イデコは中途で金融機関を変更することが出来る。どうしても元本確保型商品で運用したい場合、別の元本確保型商品を用意している金融機関に変更すればよい。

イデコの商品数に35本という上限があるため、元本確保型商品を用意しており、かつ提供する商品数が35本以下の金融機関に変更するのだ。

楽天証券:28商品

https://www.ideco-koushiki.jp/operations/pdf/311004_rakute2907.pdf

マネックス証券:22商品

https://www.ideco-koushiki.jp/operations/pdf/311006_manekkusu.pdf

他にも条件を満たす金融機関はある。以下のイデコ公式サイトでイデコを提供している金融機関の検索が出来るので利用して欲しい。

イデコ公式サイト:運営管理機関 検索

https://www.ideco-koushiki.jp/operations/

元本確保型商品を用意している金融機関に変更しても安心してはいけない。加入者がなんら運用指示をしない場合に拠出金を自動的に振り分ける「デフォルト商品」の設定を確認する必要がある。金融機関の中にはこのデフォルト商品を投資信託としている可能性があるからだ。

これまで金融機関のほとんどはデフォルト商品を元本確保型の商品としてきた。しかし、イデコと同様の制度を取っている諸外国でデフォルト商品を元本確保型にすると老後の資産不足となる可能性が問題とされた。元本確保型商品の多くはリターンが小さく、インフレなどに対応出来ないためだ。

日本でもこの課題に対応するため、今回の法改正でルールが制度化された。

※厚生労働省 確定拠出年金における運用の改善について(36ページ)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000151510.pdf

金融機関がデフォルト商品を投資信託などのリスク商品としている場合、運用指示を出さないと自動的に拠出金がリスク商品へ振り分けられる。リスクテイクを望まない方も、運用指示を出さないとリスク商品へ投資をしてしまうのだ

リスクテイクを望まない場合、デフォルト商品を確認する必要がある。もしデフォルト商品がリスク商品であった場合は注意が必要だ。加入者がしっかり元本確保型商品への振り分けを指示する必要がある。

イデコの金融機関変更には手数料が掛かる点には注意が必要だ。また、変更前の金融機関で運用中の場合でも自動解約(現金化)となることにも留意しておきたい。

金融機関の変更は、変更前の金融機関への連絡は不要だ。変更先の金融機関でイデコ開設の手続きを行うと自動的に資金を移動してくれる。期間は2~3ヶ月程度だ。

ただし、元本確保型商品を用意する義務が無くなった以上、変更先の金融機関が元本確保型商品を排除する可能性は残る。

金融機関の変更は対症療法であり、根本的に解決するには運用に関する知識を身につけ、正しい投資判断を行えるようになる必要がある

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イデコでは投資のアドバイスは受けられない

イデコでは投資のアドバイスは受けられない

金融に関する知識が無くとも、対面型の金融機関であれば投資に関するアドバイスを受けられる。対面型の銀行や証券会社と取引がある方は投資の助言を受けた方もおられるだろう。

しかし、イデコに関しては個別具体的な助言が禁じられている

確定拠出年金法(確定拠出年金運営管理機関の行為準則)第100条 において、金融機関はイデコ加入者に個別具体的な商品提案が禁止されている。そのため、拠出金をどんな商品に資金を振り分けるかは加入者に依存する。

※確定拠出年金法 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/topics/0106/tp0628-4.html

なお、現在ではイデコ運用商品に関しても個別具体的なアドバイスが出来るよう審議が続いている。

※モーニングスター イデコニュース

https://ideco.morningstar.co.jp/ideconews/012820.html

元本確保型商品がイデコ運用商品から消えていく流れの中、加入者は運用に関する知識を身に付けることが重要になってくる。特に今回の法改正の要点である「リスク・リターン」についての知識が重要だ。次からはリスク・リターンについて説明したい。

 

そもそも金融商品の「リスク・リターン」とは

そもそも金融商品の「リスク・リターン」とは

今回の法改正では「3本以上のリスク・リターンの異なる金融商品」を用意するよう金融機関に義務付けがなされた。このリスクとは単に損をする可能性のことを指しているのではない。値動きの大きさ自体を指しているのだ

値動きの大きさは「標準偏差」という数値で表す。標準偏差とはデータの散らばり方を図る数値だ。この数値が大きければ大きいほどデータの散らばり方が大きいことを表し、運用の世界ではリスクが高い商品であるといえる。

下の表を見て欲しい。例として2つのファンドを用意した。

0日目 1日目 2日目 3日目 4日目 リターン 標準偏差(リスク)
Aファンド 10,000 10,030 9,980 10,050 10,100 +1% 約0.47%
Bファンド 10,000 10,200 9,200 9,000 10,100 +1% 約5.57%

双方リターンは同じだが、値動きに違いが有る。AファンドよりBファンドの方が大きい値動きを見せている。双方の標準偏差を見てみるとBファンドはAファンドより大きな数値となっている。

値動きの大きさは過去の値動きを見てもなんとなくわかるが、標準偏差という数値を使えばより簡単に比較が出来る。

この標準偏差を理解しておけばその金融商品の値動きの大きさ(=リスクの大きさ)が把握できる。イデコ運用商品から元本確保型商品が消えても、標準偏差が最も小さいファンドを選択すると過度なリスクテイクとならない。リスクをあまり取りたくない方は、今回の例だとAファンドを選択すればよい。

標準偏差はエクセルで計算することも出来る(stdev関数)が、ネット証券のホームページや投資信託比較サイトで確認することが出来る。

元本確保型の代替として商品を選択するなら、この標準偏差が小さい銘柄を選べばよい。

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元本確保型の代替として ~国内債券ファンド・バランスファンド~

元本確保型の代替として ~国内債券ファンド・バランスファンド~

標準偏差が小さい(リスクが小さい)ファンドの代表が「国内債券ファンド」や「バランスファンド」だ。前者はリスクの小さい国内の債券のみで運用するファンドで、後者はより多くの金融商品を組み合わせ、分散投資効果でリスクを低くしたファンドだ。

下の表を見て欲しい。日経平均に連動するファンドと、国内債券ファンド、またバランスファンドのリターンとリスク(標準偏差)を比較している。

国内債券ファンドの例として「DC日本短期債OP 」を、バランスファンドの例として「ハッピーエイジング60」を用意した。

運用会社 ファンド名称 リターン    (過去10年・年率) 標準偏差   (過去10年・年率)
T&Dアセット 225インデックス 9.34% 19.34%
日興アセット DC日本短期債OP 0.25% 0.30%
損保ジャパン日本興亜 ハッピーエイジング60 2.14% 2.25%

日経平均に連動する「225インデックス」は最もリターンが高いが、標準偏差も3ファンドの中で最も高くなっている。

一方国内債券ファンドやバランスファンドは標準偏差が相対的に小さい。標準偏差が小さいので、リスクの低い商品だと言える。

いずれのファンドも元本の保障が無いリスク商品だが、元本確保型の代替としてまず選択肢に入る商品だ。

他にも標準偏差の小さい商品はある。以下のような投資信託比較サイトを利用し、探してみて欲しい。

みんかぶ投信 標準偏差ランキング

https://itf.minkabu.jp/ranking/standard_deviation

投資の世界では「同じリターンならより小さいリスク」(=「同じリスクならより大きいリターン」)を選択することが合理的だとされている。言わば「リスク・パフォーマンス」を考えるのだ。

標準偏差は単純にリスクの低い銘柄を探すときに有効だが、よりリスク・パフォーマンスの良い銘柄探しにも有効だ。是非活用して欲しい。

 

正しい金融知識を身につけ、最適な投資行動を

正しい金融知識を身につけ、最適な投資行動を

イデコは資産形成の手法として強力な制度だが、元本確保型商品が無くなっていく傾向にある。

運用に関する知識の無い方にとっては不安が募るだろうが、そもそも元本確保型商品ではイデコ自体の手数料をペイ出来ない上、インフレに対応することは難しかった

投資に関する知識を身に付け、最適なリスク度合いの商品を選択することで初めてイデコを使いこなすことが出来るといえる

今回の記事ではリスク(標準偏差)について特に述べたが、他にも有益な金融知識を身に付け資産形成に役立てて欲しい。

金融機関に勤務していた経験から、保険や投資信託など
お金に関わるあらゆる記事の執筆、監修を行っています。
ファイナンシャルプランナーや税金・財務関係の各種資格保有。

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