「投資」について学んでいくうちに、集中投資と分散投資という投資手法が出てくる。
それぞれの違いは、言葉通り
【集中投資=集中的に行う投資手法】
【分散投資=分散して投資を行う手法】である。
とくに難しいことはなく、ただそれだけの違いだ。
しかしなぜ、有名投資家の中には、集中投資で巨額の富を手に入れた人、分散投資で成功した人がいるのだろうか。
集中投資と分散投資の根本を知ればきっと、本当の「違い」について気付けるはずだ。
そこで今回は、集中投資と分散投資の違いやそれぞれに向いている人・向いていない人について紹介していく。
この記事でわかること
集中投資と分散投資の違い

分散投資も集中投資も「投資」という観点から見ればなんら 変わりはない。
しかし、分散投資と集中投資とは似て非なるものである。
それぞれの違いを簡単に言えば「投資先の数」である。
集中投資は投資先を絞る手法を言い、分散投資は複数 の投資先に分散する手法を指す。
言うなれば「ローリスク・ローリターンかハイリスク・ハイリターンかの違い」である。
今ある資産を積極的に増やし続けたいというのであれば、集中投資がおすすめだ。
一方で、今ある資産を少しずつでも確実に増やしながら、あまり目減りさせたくないのであれば分散投資がおすすめだ。
もう少し具体的な違いを把握してもらうためにも、集中投資と分散投資の中身について詳しく紹介していく。
集中投資とは
集中投資とは、少ない投資先に資産を投資することを言う。
一般的に集中投資の投資先は3~4銘柄 程度とされている。
そもそも、投資を行う上でもっとも大切にしなければいけないのが「ポートフォリオ」である。
一生懸命蓄えた資産を溶かしてしまってはまったく意味がない。
株を例に挙げてみよう。
例えば、Aという会社とBという会社の株を購入していたとしよう。
A・Bどちらの会社も同じような要因で株価が下落したとしたらどうだろうか?
あなたの保有する資産は一気に目減りしてしまう。
逆に、同じ要因で下落するということは、同じ要因で株価が上昇する可能性もある。
つまり、大きな利益をあげられる可能性も十分にあるということだ。
しかし、投資はギャンブルではない。投資とは「将来の利益のために資金を投入すること」である。
上記のような0か100かの極端な掛け方は投資としてはおすすめできない。
本来であれば、複数の投資先を持ち、どこかの投資先が挫けても他の投資先で補填できるように組むのが正しい。
このように、複数の金融商品を組み、運用 することを「ポートフォリオを組む」と言う。
資産を形成していく上で、ポートフォリオはとても重要だ。
そして、集中投資とはポートフォリオ形成における金融商品が少ないことを意味する。
金融商品が少ないとは言っても、1つや2つに絞るわけではない。
一般的な集中投資は3~4つ程度の金融商品に分散させる。
ただ、分散投資に比べてリスク度は高い。言うなれば「ハイリスク・ハイリターン」の投資手法だ。
分散投資とは
分散投資とはその言葉通り「複数の投資先に投資をする手法」である。
集中投資は、3~4つ程度の金融商品に集中的に投資を行う手法であったが、
一方で分散投資は、10以上の金融商品に投資を行う。
投資を行う銘柄や金融商品の数に明確な定義はないが、一般的には10以上ということだ。
また、分散投資はローリスクが魅力的であるが、10以上の銘柄や金融商品を持つことで、大幅にリスクを抑えられる。
株式の例で確認してみよう。
あなたが3,000万円の資産を有し、3,000万円の資産をすべて株式に投じたとしよう。
集中投資であれば3~4つの銘柄だ。
それぞれに1/4ずつ投資を行う。
もしもいずれか1つの銘柄の価値が無価値になってしまえば、あなたの資産は2,250万円となる。
もちろん、いずれかの銘柄が下落すれば他の銘柄が上がるよう工夫をして投資を行う必要がある。(今回は、例としての紹介なので省略する。)
一方で分散投資は、10以上の銘柄に投資を行う手法だ。
つまり、10の銘柄に300万ずつ投資を行い、1つが無価値になったとする。
あなたの資産は300万円減ってしまうが、集中投資よりも減る金額が少なくて済む。
ただ、ここで注意してもらいたいのが、逆も同じことが言えるということだ。
つまり、1つの銘柄の価値が大幅に増加したとしよう。
集中投資であれば利益も多額になるが、分散投資の利益は集中投資に比べて少ない。
つまり『集中投資=ハイリスク・ハイリターン(資産を増やす投資)』
『分散投資=ローリスク・ローリターン(資産を守る投資)』であると言える。
集中投資と分散投資のメリット・デメリット

集中投資と分散投資の違いを知った上で、次にそれぞれのメリット・デメリットについて紹介する。
集中投資のメリット・デメリット
【メリット】
・少額の投資で最大のリターンを得られる
集中投資は、少額の資産で最大のリターンを得られる。
そのため、少額資産から投資を始めたい方にはおすすめの投資方法である。
また、天才投資家と呼ばれ、純資産約840億ドルを持つウォーレン・バフェット氏の格言で次のような言葉がある。
『分散は無知に対するヘッジだ。』
ウォーレン・バフェット氏は集中投資で多額の資産を築き上げ、投資は集中投資であるべきだと考えている。
分散投資は無知の者が行う投資である。
自分の知っている金融商品や銘柄に絞って、集中的に投資を行うべきだとする考え方である。
例えば、日本国内のSNSでもっとも多くの人が利用する「LINE」の株価を見てほしい。
約1年前の2019年3月は4,000円前後で推移している。
しかし、2020年2月は5,400円程度まで株価が上昇している。
日本でのLINE使用者数は8,200万人であり、スマートフォン所有者の約80%が利用している。
つまり、日本国民のほとんどの人が知っているLINEであれば、ウォーレン・バフェット氏の言う言葉も意味を成す。
知っている会社などの株式について深く掘り下げて知れば、集中投資で最大のリターンを得られるであろう。
・管理がしやすい
投資先が少ない集中投資では、管理がしやすいのもメリットの1つである。
普段働いている方などはとくに、時間が取りにくいのではないだろうか。
ひとつひとつの金融商品を吟味し、ポートフォリオをどのように組むかを考える投資で、数が多ければ多いほど大変だ。
集中投資は、3~4程度の金融商品へ投資を行うため、分散投資に比べて管理がしやすい。
投資したあとも、定期的に見直しを行う必要があるが、そういった部分で管理がしやすいのも集中投資の魅力だ。
【デメリット】
・ハイリスク
集中投資は、分散投資に比べてリスク度の高い投資手法である。
大きなリターンを得られる一方で、大きなリスクを背負っているという点には注意してもらいたい。
・分析力や精神力が求められる
集中投資は、何度も言うようだがハイリスク・ハイリターンである。
ときには、持っている金融資産の大幅な下落が発生する可能性も十分にありえる。
そういった際に、冷静に市場を把握し、分析を行うことがとても大切だ。
そして、逆も然り。
大幅な利益が発生していても、冷静に判断し決済を進めなければ意味がない。
投資は「損小利大」が大前提である。
損を小さくし、最大の利益を得る。「損大利小」にならないように心がけよう。
分散投資のメリット・デメリット
次に分散投資のメリット・デメリットについても紹介していく。
【メリット】
・リスク度が低い
先にも紹介したように分散投資は「資産を守る投資」である。
集中投資に比べてリスク度が低く、安全性重視の人にはおすすめの投資手法である。
分散投資の魅力・メリットの説明をする際に用いられる「卵は1つのカゴに盛るな」という格言がある。
1つのカゴの中にたくさんの卵を入れていて、落としてしまったらすべて割れてしまう。
しかし、複数のカゴに分散して卵を入れておけば、1つ落としてもダメージが最小で済むという話だ。
言うなれば集中投資は、1つのカゴに卵を入れる投資。
分散投資は複数のカゴに卵を入れる投資であると言える。
・売買タイミング
少ない投資先へ投機的に行う集中投資は、短期間での売買が基本のため、売買タイミングが非常に重要である。
一方で長期的な視点で分散投資を行う場合、投資対象の価格変動はあるものの、短期的な売買とは異なりマーケットを追いかける必要はない。
また、地域分散や時間の分散(ドルコスト平均法)、通貨の分散なども意識すれば尚 良い。
【デメリット】
・短期間での大きなリターンに期待ができない
分散投資の場合、投資元本が細かく分散されてしまうことから、リターンを得るのに時間がかかる。そのため、短期間での 大きなリターンには期待ができない。
もし短期間で大きなリターンを得たいのであれば、集中投資がおすすめだ。
・管理の手間
投資先が増えれば増えるほど管理の手間が増えてしまう。
投資先の分析もある程度は必要であるため、時間の少ない人にはデメリットに感じられるだろう。
集中投資に向いている人

集中投資に向いている人は、
- 資産を増やしたい人
- 必要な知識を十分に学んでいる人
- 努力を怠らずに日々分析を行える人
- 少ない資産で投資を始めたい人
- 強い精神力を持っている人
であると言える。
とくに重要なのが、必要な知識を学び、しっかりと分析を行えると言うことだ。
集中投資は、少ない銘柄や金融商品に集中して投資を行うため、一度コケてしまえば立ち直りが難しい。
そのため、しっかりと学び、分析を行う能力を求められる。
分散投資に向いている人

分散投資に向いている人は、
- リスクを抑えて資産を守りたい人
- 欲深くない人
- 長期的に利益を追求できる人
- 売買タイミングの時間が取りにくい人
であると言える。
とくに分散投資に向いている人は、リスクを抑えて資産を守りたい人である。
いずれ使いみちの決まっている資産を運用するのであれば、なおさら分散投資が良い。
まとめ

今回、集中投資と分散投資の違いなどについて紹介してきた。
結果として、どちらが正しいということは言えない。
集中投資で巨額の富を築いた投資家もいれば、分散投資で巨額の富を築いた投資家もいる。
資産の用途や自分の性格などを鑑みて、総合的に判断をしてほしい。

富田FP事務所 代表 ファイナンシャルプランナー
2019年度MDRT成績資格会員(8年連続MDRT成績資格会員)
ゴールドマン・サックス証券会社等、複数の金融機関にて勤務し、金融業界のノウハウを学ぶ。2007年 独立して、株式会社フォーチュンフィールド設立。富田FP事務所として、独立系FP、独立系IFAを含め、証券会社、保険会社、保険代理店、にて金融業界の知識を活してプロフェッショナルの事業を行う。
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