ヘッジファンドとはどういう存在?その特徴とヘッジファンドを利用する方法

ヘッジファンドとはどういう存在?その特徴とヘッジファンドを利用する方法

株価の急変動の際、ニュースなどでヘッジファンドという名前が語られる。あるいはテレビドラマなどで善良で弱い立場の企業を買収してしまう、悪役のように描かれることもある。名前を聞いたことがあっても、ヘッジファンドの実体は日本ではあまり知られていない。

ヘッジファンドとはいったいどのような存在なのだろうか?ドラマで描かれるように「ハゲタカ」として忌むべき存在なのだろうか?決してそうではない。あくまで投資収益を純粋に追求しているプロ集団だ。

この記事では、日本であまり一般的とは言えないヘッジファンドについて紹介する。馴染みの薄いヘッジファンドについて理解が進み、みなさまの資産運用に新しい選択肢が出来れば幸いだ。

 

ヘッジファンドとは?

ヘッジファンドとは?

ヘッジファンドは、投資家から資金を集め代わりに運用する、投資一任サービスを提供している。主に富裕層がヘッジファンドを利用している。

海外、特にケイマン諸島などのタックスヘイブンに拠点をおくヘッジファンドは金融庁の監視下にない。また日本向けの窓口を持っていないものがほとんどだ。プライベートバンカーなど、一部国内富裕層向けサービスが窓口として機能していることはあるが、基本的には自分からコンタクトを取る必要がある。

富裕層向けサービスであることから、必要投資金額も大きい。最低でも数千万円の投資金額が必要であることが一般的で、数億円からの資金しか受け付けていないヘッジファンドもある。

ヘッジファンドに支払うコストも高額だ。資産残高に対し、数%の手数料(フィー)が掛かる他、値上がり分の数十%分を成功報酬として支払う。フィーは年間2%、成功報酬は20%程度が標準だ。

 

ヘッジファンドが狙う“絶対収益”

ヘッジファンドが狙う“絶対収益”
ヘッジファンドには独自の投資戦略がある。それは絶対収益を追求する戦略だ。

株式などの変動資産に投資をする場合、通常は上昇相場の時に利益を得、下落相場の時は損失を抱える。個別銘柄を厳選したとしても、ある程度相場の影響を受けてしまうのが普通だ。

それに対し、ヘッジファンドは相場全体の浮き沈みに関わらず利益を得ようとする。ヘッジファンドが得られる報酬は資産残高に対するフィーと成功報酬であり、相場の変動に任せていては収益が安定しないためだ。また顧客のリターンに対する期待も高く、損失の発生は貴重な顧客を失いかねない。

相場の変動に関わらず利益を得られるなら高いコストを支払ってでもヘッジファンドを利用したいところだ。しかし、そんな投資手法が存在するのだろうか。

相場の影響を出来るだけ排した投資戦略はいくつか存在する。そのなかでもヘッジファンドは、理論上相場の影響を受けずに収益獲得が可能な投資戦略を特に取り、絶対収益を獲得しようとしている。

その1つがロング&ショート戦略だ。同じ業種の株式でも割高な銘柄と割安な銘柄が存在する。この投資戦略は同じ業種で割安な株を買い割高な株を売るという、買いと売りの両建てを行う戦略だ。株価が一時的に割高あるいは割安になっていても、いずれ株価は適正水準に修正されるという性質を利用した戦略だ。

たとえば同業のA社・B社という銘柄があり、それぞれ100円が株価の適正水準だとする。A社の株価が80円、B社の株価が120円となっている場合、A社の株は買い(ロング)、B社の株は売り(ショート)を仕掛ける。相場の変動があっても、それぞれの株価はいずれ100円に収束し両方のポジションで利益が得られる。

似たような投資戦略にアービトラージがある。これは同じ銘柄が、違う市場で価格に差がある時に有効だ。例えばA社の株が東証で1,000円、名証で1,050円になっている場合、東証のA株を買い名証のA株を売る。同一銘柄の市場間の価格差はいずれ解消され、差額50円分の利益が得られる。

先物やオプションなどのデリバティブを利用した投資戦略も絶対収益の追求によく利用される。現物とデリバティブを組み合わせ株価変動の影響を相殺し、配当やオプション料などのインカムゲインだけを得る手法もある。カバードコール戦略などがそうだ。

このように、絶対収益を追求するためヘッジファンドは数多くの投資戦略を取る。これらの投資戦略は伝統的手法で、近年ではHFT(超高速取引)など新しい手法も取り入れるヘッジファンドも出てきた。いずれのヘッジファンドも顧客の高いリターン要求に答えるのが目的だ。

 

ヘッジファンドのこれまでの実績

ヘッジファンドのこれまでの実績

ヘッジファンドは2000年代初めまでは年間20~30%のリターンを稼いでいた。その後のリーマンショックを受け、相場が急落。これにはヘッジファンドは売りで対応し、収益を稼いだファンドもあった。しかし、その後の株価上昇時にヘッジファンドはパフォーマンスを下げてしまった。

なぜ相場上昇時にパフォーマンスが下がるのか。絶対収益を狙う投資手法は、基本的に「売り」を仕掛ける取引を含ませる。それがリーマンショック後、日米欧が行った量的緩和で株価は右肩上がりに上昇した。これは売りを仕掛けると損失となってしまう相場であり、ヘッジファンドは苦境に陥る。

相場全体が右肩上がりの状況で伝統的手法を取るヘッジファンドは、コストの低いETFなどの運用に見劣りするようになった。一方HFTやAIなど新しい運用手法を取り入れたテック系ヘッジファンドが大きなリターンを得た。

絶対収益を狙うヘッジファンドは相場上昇時に弱い、またリーマンショックのような急落時ではやはり損失が出る可能性が高い。ヘッジファンドの絶対収益戦略は相場全体の上げ下げがある範囲内に収まっているときに最も効果が高いと言えるだろう。

 

利用には直接口座開設

利用には直接口座開設

近年ヘッジファンドの運用に陰りが見えるとはいえ、優れた過去の実績を持つ。

また絶対収益を追求する運用哲学に共感し利用してみたいという方は一定数いるだろう。日本でヘッジファンド利用するにはどうすればよいのだろうか。

先述したように海外を拠点にするヘッジファンドは金融庁の認可外だ。金融庁の認可外ということは国内金融機関が販売することはない。自身でヘッジファンドに直接コンタクトを取る必要がある。

ヘッジファンドは海外の証券会社や銀行で口座を設けており、そこで資金を受け入れる。資金はドル建てで入金すれば可能だが、運用状況等の開示資料や手続きの説明文書は当然外国語だ。高額な必要資金を用意できても言語の壁が立ちはだかる

またヘッジファンドは解約に制限を設けているのが普通だ。一般的にヘッジファンドは4半期ごとの契約となり、契約を解除したい場合は期末の45日前に申し出る必要がある。自由に売買が出来るわけではない点に留意が必要だ。

自身で判断が難しいなら独立系プライベートバンカーの助言を受ける方法もある。が、いずれにせよヘッジファンドを利用するハードルは高いといえるだろう。

 

ヘッジファンドと投資信託の違い

ヘッジファンドと投資信託の違い

一方、国内にもファンドと呼ばれるものがある。銀行や証券会社で販売されている投資信託だ。これら投資信託への投資ハードルは非常に低い。市場が休み出ない限り売買は自由にできる上、100円から投資が可能だ。

ヘッジファンドとこれら投資信託はなにが違うのだろうか。

大きく違う点は運用方針だ。ヘッジファンドの場合、上述したようなさまざまな投資戦略を任意に取る。そのため運用方針は流動的で、事前にどのような投資戦略を取るか完全に把握することは難しい。

それに対し、一般の投資信託は事前に運用方針を明確にしている。運用方針やリスクは目論見書(説明書のようなもの)に記載されており、運用期間中に変更することはない。したがって、相場がその投資信託に不利な状況となっても同じ投資戦略を取り続ける。

一般の投資信託の方がヘッジファンドより投資家の判断が重要になるといえるだろう。

解約のルールにも違いがある。ヘッジファンドは期末の45日前までに解約を申し出る必要があったが、投資信託は市場が休場でない限りいつでも解約が可能だ。

コストの面でも違いがある。ヘッジファンドにはフィーと成功報酬の2つの手数料が発生したが、この内成功報酬手数料を取る投資信託はほとんどない。フィーと似た仕組みの信託報酬という手数料は存在している。

投資信託は買い付けの際に手数料が掛かる銘柄もある。0~4%程度買付け代金からと別に引かれてしまう。買付手数料が無い銘柄も増えているが、事前に確認しておきたい。

 

ヘッジファンド型投資信託とは

ヘッジファンド型投資信託とは

投資信託の中にはヘッジファンドのように絶対収益を追及する目的の銘柄もある。目論見書に投資戦略が記載されており、ロング&ショート戦略など絶対収益を目的とした投資戦略を取ると明記されているものがそうだ。

ヘッジファンドより運用者の自由度は減るが、ヘッジファンド型投資信託のポジション比率は変動の余地を残している銘柄もある。例えばショートの額をロングの80以上程度としているような銘柄だ。市場に応じ、ある程度臨機応変に対応してくれることが期待される。

ヘッジファンド型ではないが、独自の運用哲学で好成績を収めているアクティブ投資信託も存在している。日本株の場合、アクティブ型投資信託のリターンは市場平均を超えているものが珍しくない。これらの株は銘柄の入れ替えを比較的積極的に行い、ヘッジファンドのようにある程度市場の状況を鑑みた運用がなされる。

 

ヘッジファンド型投資信託の実績

ヘッジファンド型投資信託の実績

国内ヘッジファンド型投資信託の実績は投資情報会社モーニングスターのウェブサイトで確認できる。

過去3年で最も成績の良かった銘柄は楽天投資顧問の「楽天ボルティ」だった。年率で20%以上のリターンがあった。VIX先物のロング・ショートを機動的に切り替え、市場の平常時・急落時双方でリターンの獲得を目指すヘッジファンド型投資信託だ。

リターンを求めるだけがヘッジファンドではない。絶対収益を目指すのだからリスクは抑えられていて当然だ。ヘッジファンド型で最も低リスクだったのが野村アセットの「野村ワールドスターオープン」だ。

野村ワールドスターオープンは世界の株式や債券に投資しており、デリバティブも含め運用効率の向上を図っている投資信託だ。過去3年のリスク(標準偏差)は年率10.52で、同じく世界の株式に投資する「eMAXIS全世界株式インデックス」が同14.73であることを考えるとリスクを抑えることが出来ているようだ。

投資比率を機動的に変更しており、直近の運用報告書だと実質投資割合を債券は▲20%、株式は6割程度とショートの割合を強めており、多くのポジションを取っていなかったことがリスクを抑えることに成功した理由だろう。

前期では株式は100%近く保有していたことから機動的なポジションの変動が見受けられる。よりヘッジファンドらしい投資信託と言えるだろう。

アクティブ型の場合、過去3年リターンが最も高かったのが日興アセットの「グローイングベンチャー」だ。投資顧問会社「エンジェルジャパンアセット」の助言を受けている投資信託で、年率36%ものリターンがあった

エンジェルジャパンアセットは他のアクティブ型投資信託にも助言しており、高い運用成績を収めている銘柄が多い。「Jrevive」や「Jnext」など、国内中小型の株式投資を得意としているようだ。

ヘッジファンドでなくとも、ヘッジファンド型やアクティブ型の投資信託でも高いリターンは得られる。特にヘッジファンドのように絶対収益を期待する場合、ヘッジファンド型の投資信託でほぼ同様の投資効果は期待出来るといえるだろう。

 

ラップ口座やAI運用も比較対象に

ラップ口座やAI運用も比較対象に

ヘッジファンドを利用する場合、事前に得られる情報の乏しさや金額の面、また高いコストなど多くのハードルがある。実際に投資する場合は投資信託で代用するのが最も容易だろう。

近年では似たような投資商品であるラップ口座は投資金額を引き下げている傾向にあり、またAIを利用したロボ・アドバイザーなどの商品も提供され始めている。これらの手数料はヘッジファンドよりは低い傾向がある。

ヘッジファンドの絶対収益を求める投資戦略は魅力的だが、代用投資商品を利用しより効率のよい資産運用を行うことをおすすめする

金融機関に勤務していた経験から、保険や投資信託など
お金に関わるあらゆる記事の執筆、監修を行っています。
ファイナンシャルプランナーや税金・財務関係の各種資格保有。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です