保険への加入を検討している方の中には、外貨建て保険への加入を勧められている方もいるのではないだろうか。
もしも、外貨建て保険を勧められているのであれば、もう一度思い出してほしい。
「リスクについてしっかりと教えてくれたか?」
もしもリスクについての説明が不十分であるならば注意しなければいけない。
外貨建て保険はメリットが多い保険商品だが、デメリットも非常に多い商品である。
実態として、外貨建て保険のデメリットをしっかりと把握せずに加入してしまい、後悔をする人が多い。
そこで今回は、外貨建て保険のリスクについて重きを置き、外貨建て保険で上手に資産を守るための知識について紹介する。
この記事でわかること
外貨建て保険とは
外貨建て保険とは、生命保険料や保険金支払いなどのすべてを外貨で行う保険である。
外貨で支払うとは言ったものの、自分で外貨に交換をして支払ったり支払われたりするわけではないので安心してほしい。
保険料の支払いや保険金の受け取りはすべて日本円で行うことができる。
「それでは普通の生命保険と変わらないのではないか?」と思われた方もいることだろう。
保険料の支払いや保険金の受け取りなどはすべて日本円で行うことができるが、すべて外貨で計算されるということだ。
つまり、月払いを選択して米ドル建て保険へ加入したとすれば「保険料が毎月〇〇米ドル」のように、米ドルで計算されるということだ。
保険金も同じだ。
保険金支払い事由が発生した際には、当然に保険金が支払われるが「保険金〇〇米ドル」のようになっているのだ。
例えば、毎月100米ドルの保険料を支払う保険契約を締結したとしよう。
2019年11月末時点での為替は、1米ドルあたり109円なので、支払う保険料は10,900円となる。
もちろん円高ドル安になれば、保険料の支払い額が安くなるし、円安ドル高になれば保険料は高くなる。
このように、支払う保険料や受け取れる保険金が外貨で表され、それらに従って支払いや受け取りを行う保険を外貨建て保険という。
なお、外貨建て保険は、終身保険や養老保険、個人年金保険や変額個人年金保険など、生命保険に分類される保険でしか取り扱いがない。
外貨建て保険はリスクが多い!

外貨建て保険は、為替差益に期待ができるなど、通常の生命保険に比較すればメリットが多い。
一方で、外貨建て保険はデメリットが多いのも事実である。
ほとんどの方は、保険へ加入する際には、保険屋と呼ばれる人に相談をすることだろう。
しかし、保険屋の説明が不十分であり、結果として外貨建て保険に対する苦情が後を絶たない。
「保険屋は外貨建て保険のリスクをまったく開示しない」と言っても良いほどだ。
全員がそうとは言わないが、良いことばかりを言い、リスクについてはまったく話さない人が非常に多い。
外貨建て保険へ加入するのであれば、本当に信用できる保険屋から加入すること。
自分でリスクについて徹底的に調べ、許容できる範囲内かどうかを見極めること。
この2つはとても重要である。
生命保険は老後資金や教育資金、遺族の生活費などとても重要なことに使用される方がほとんどだろう。
後から悔やんでも遅いので、今回紹介するデメリットについてしっかりと把握してほしい。
為替リスク
先程、外貨建て保険は為替差益に期待ができると紹介した。
為替差益に期待ができるということは、為替差損が生じるのも当然である。
そもそも為替差益・為替差損とは、円高になったり円安になったりした際に生じる利益もしくは損益だ。
例えば、保険料の平均レートが1米ドルあたり100円だったとしよう。
保険契約解約時や保険金支払い事由発生時に、1米ドルあたり110円であれば、1米ドルあたり10円の為替差益に期待ができる。
一方で、1米ドルあたり90円の円高になってしまっていれば、1米ドルあたり10円の為替差損が発生する。
通貨は常に変動しているため、為替リスクが発生するのだ。
ただ保険屋は、リスクを隠すために、為替差益についてあまり言及しない。
事実、リスク開示不十分であるとの苦情が後を絶たず、6年間の間で苦情件数が4倍にもなっている。
(参考元︰産経新聞
https://www.sankei.com/economy/news/190613/ecn1906130002-n1.html)
生命保険への契約目的は人それぞれだが、貯蓄目的や教育資金、死亡保障として保有する方がほとんどだろう。
保険屋に「為替リスクについて教えてほしい」と申し出たとしても「保有していればいずれ元の値段に戻る」としか言わない。
米ドルであれば世界シェアが1位であるし、安定した通貨であることから、円高になってもいずれは戻るだろう。
しかし、保険へ加入する目的をもう一度考えてほしい。
死亡保障を目的に入っているのであれば、為替レートが戻るまで生きていなければいけない。
突然交通事故に見舞われるかもしれないし、病気で亡くなってしまうかもしれない。
「いずれ戻る」などと悠長なことは言っていられないはずだ。
教育資金目的でも同じことが言える。
お子様が学校へ入学のタイミング、もしくは入学前の準備段階で解約返戻金を受け取りたいはずだ。
為替レートが数日、数ヶ月で急激に動くことはほとんどない。
いつ戻るかもわからない不安定な状態が続くということだ。
もし、貯蓄目的で外貨建て保険へ加入するのであれば、戻るのを待っても良い。
為替差損によって元本割れが起こる可能性があるということを、しっかりと覚えておいていただきたい。
為替手数料
外貨建て保険には、為替手数料という独自の手数料が発生する。
為替手数料についても、自分から聞かなければ、ほとんどの保険屋は言わない。
為替手数料とは、円を外貨に交換もしくは外貨を円に交換する際に発生する手数料のことだ。
この為替手数料は、1米ドルあたり◯円などのように定められている。
そのため、支払う保険料や受け取る保険金が高ければ高いほど為替手数料も高額になる。
為替手数料は保険会社や国によっても異なるが、米ドルであれば、1米ドルあたり50銭程度が相場だ。
つまり、受け取る保険料が200,000米ドルであれば、10万円の為替手数料が発生する。
解約控除
解約控除は、外貨建て保険ではなくても発生するが、手数料を考慮すれば円建て保険よりリスクが高い。
そもそも解約控除とは、保険契約締結後10年以内に解約をしてしまった場合に適用されるものだ。
保険契約締結後10年以内に解約をすれば、手数料や諸費用が発生し、解約返戻金が予定より少なくなる。
元本割れしてしまう可能性もあるので、早期解約は避けたいところだ。
もしも緊急で資金が必要となったなら、契約者貸付制度の利用をしたほうが良い。
解約返戻金の7割~9割までしか借りられないが、審査もなく最短で即日に借りられる。
保険契約も継続されるのでおすすめだ。
もしも借り入れ後に保険金支払い事由が発生すれば、貸付金を引いた額が支払われるので安心してほしい。
外貨建て保険はなぜ選ばれるのか

外貨建て保険は、リスクが非常に多く、苦情がとても多いのも事実だ。
その一方で、外貨建て保険を選び、加入する方も非常に多い。
外貨建て保険がなぜ選ばれるのか?について詳しく紹介していこうと思う。
為替差益に期待
外貨建て保険のリスクでも少し触れたが、外貨建て保険は為替差益に期待ができる商品だ。
円建て保険に比べれば、リスクが多い分、リターンも大きいのが魅力のひとつである。
円建て保険と外貨建て保険で同じ保険料を支払っていたとしても、外貨建て保険のほうが、リターンが大きくなる可能性があるということだ。
保険を選ぶ際には、ローリスクローリターンを選ぶのか、ハイリスクハイリターンを選ぶのか。
自分のニーズに合わせて検討しよう。
そして何度も紹介したが、保険屋の話を絶対に鵜呑みにしないことがとても重要だ。
外貨建て保険のリスクについて知ったうえで初めてメリットが生まれる。
高利回り
現在の日本では、超低金利が続いており、国内の保険会社が示す予定利率も非常に低い状態が続いている。
一方で外貨建て保険は、予定利率や返戻金率が高く、貯蓄目的の観点から大変な注目を集めている。
外貨建て保険は、保険料も割安で表面利回りで見ても、円建て保険よりも外貨建て保険のほうが高い。
高利回りであれば安い保険料で充実した保障内容や返戻金率が高くなるため、外貨建て保険への人気も高まっている。
儲かるように見える
外貨建て保険は、うまくいけば為替差益に期待ができるし、高利回りにも期待ができる。
あくまでも「うまくいけば」だ。
必ず儲かるわけではないのにも関わらず、外貨建て保険のメリットのみを紹介されれば、誰でも「外貨建て保険=儲かる」と考えてしまう。
これは当然のことである。
しかし実態はまったく異なり、先にも紹介したように、外貨建て保険についての苦情が後を絶たない。
保険屋はメリットのみを紹介し、デメリットやリスクについては紹介しない傾向にある。
「うまい話には裏がある」という言葉があるように、ノーリスクで儲かる話はない。
何事にも疑ってかからなければ自分が損をしてしまう。
もちろん外貨建て保険は、魅力の多い商品であることも事実だ。
ただ、リスクについてもしっかりと把握しておくべきだ。
どこの国の通貨で保険へ加入できるのか

外貨建て保険でもっともポピュラーな通貨が「米ドル」だ。
米ドルは多くの国や地域で利用できるうえに、世界シェア1位の通貨である。
しかし、米ドルの他にも豪ドルやNZドルなどさまざまな通貨で外貨建て保険へ加入できる。
今回は、米ドル・豪ドル・NZドル、3つの外貨建て保険のメリットデメリットについて紹介していく。
米ドル
外貨建て保険の中でもっともポピュラーで、世界シェア1位の米ドル。
米ドルの一番のメリットは「安定性」だ。
米ドルは世界の基軸通貨とされており、他の通貨に比較すれば安定性は抜群だ。
安定性が抜群であるうえに、予定利率が高い分、保険料が割安であったり貯蓄性が高かったりと、メリットが多い。
一方で、他の外貨建てと比較すれば、大きな収益性に期待ができない。
為替変動率があまり大きくはないため、為替差損が最小限で済む可能性は高いが、為替差益にも対する期待も小さい。
もちろん、各国の情勢によっては1ドルあたり何円も動く可能性があるだろう。
ましてや生命保険は何十年という長期間で加入するものだ。
直近の予想はできても数十年後の予想をするのは難しい。
ただ、米ドルは安定した通貨であることを考えれば、他の外貨建てに比べてローリスクローリターンであると言えるだろう。
米ドルの「安定性」をメリットと捉えるか、デメリットと捉えるかは、それぞれの状況次第だ。
もちろん、米ドルであっても元本割れリスクがあるから注意しておいてほしい。
豪ドル
豪ドルの為替変動率は非常に荒い。
現在の豪ドルは、1豪ドルあたり74円程度で取引されているが、約10年前の2009年には55円台にまで暴落した。
その一方で2013年には1豪ドルあたり105円台まで上がった。
2009年~2013年までの4年間もの間で50円もの差が発生しているのだ。
これだけ荒ければ、大きな為替差益に期待ができる反面大きな為替差損が発生する可能性もある。
一種のギャンブルに近いと言えるだろう。
死亡保障や教育資金のように、いつ保険金支払事由が発生するかわからない、もしくはおおよその解約日が決まっている人には向かない商品だ。
ただ貯蓄目的として、保有するのであれば良いかもしれない。
それこそ「回復を待てば良い」のだ。
さらに利益を追求しても良いだろう。
NZドル
昨今、注目を集めている外貨建て保険が「NZドル建て」だ。
ニュージーランドは先進国でありながらも、比較的高金利であるためだ。
一方で、NZドルも為替変動率が荒い。
現在のNZドルは1NZドルあたり70円前後で取引されているが、2009年には44円台、2018年には80円となっている。
1年間での平均変動幅は約15円となっており、変動率も非常に高い。
解約返戻金・満期保険金受取りにかかる税金

保険金支払い事由の発生や解約返戻金、満期保険金受取りなど金銭の支払いがあった際には、当然に税金が発生する。
そもそも所得には、10種類もの種類があり、それぞれで控除額などが異なる。
受け取り方や契約者、受取人の関係によっても課税関係が異なるため、注意しなければいけない。
正しく申告しなければ、最悪の場合刑事罰の対象となってしまう。
そこで、受け取る保険金と税金の関係性についても抑えておいてほしい。
保険契約の解約や満期保険金受け取りに関わる所得には一時所得と雑所得の2種類がある。
それぞれの違いについて詳しく確認していこう。
一時所得
解約返戻金や満期保険金を一括で受け取った際には、一時所得の対象となる。
死亡保険金も例外ではない。
ただし、保険契約者・被保険者・保険金受取人の関係によっては、所得税ではなく贈与税や相続税の課税対象になるので注意したい。
子1人の夫婦世帯で詳しく確認していこう。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金 |
夫 | 夫 | 妻・子(法定相続人) | 相続税(非課税控除枠あり) |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税(一時所得・雑所得) |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
夫 | 夫 | 法定相続人以外 | 相続税(非課税控除枠なし) |
なお、一時所得の非課税控除枠は50万円までだ。
つまり、解約返戻金や満期保険金を受け取った際には、支払った保険料+50万円を引いた金額に所得税が課税される。
雑所得
生命保険金は一括ではなく、年金形式でも受け取れる。
老後の資金として保険契約を締結する方もいるだろう。
もしも満期保険金などを年金形式で受け取るのであれば、雑所得の課税対象となる。
雑所得は、総収入-必要経費(支払った保険料)で計算される。
つまり、特別な控除額はないということだ。
リスクを把握し上手に運用

今回、外貨建て保険について紹介してきた。
外貨建て保険は、とても魅力の多い商品であることは間違いない。
しかし、何度も言うが保険屋からリスクについての言及は少ない。
外貨建て保険への加入を検討しているのであれば、自分でリスクについて把握をし、許容できる範囲内かを見極めなければいけない。
外貨建て保険は、各国の情勢によっても大きく左右される商品だ。
未来のことは誰にもわからない。
解約控除がかかる生命保険は、最低でも10年間は解約できない。
10年後の未来を誰が予想できるだろうか。
各国の情勢も見当がつかないし、日本という国もどうなっているかなんて予想はできない。
10年後に保険契約を解約しようと考えていても、被保険者が10年以内に死亡する可能性もある。
いつどこで何が起こるかわからないからこそ、許容範囲内で保険へ加入するべきだ。
魅力的な部分だけに魅了されず、しっかりと比較検討をしよう。

富田FP事務所 代表 ファイナンシャルプランナー
2019年度MDRT成績資格会員(8年連続MDRT成績資格会員)
ゴールドマン・サックス証券会社等、複数の金融機関にて勤務し、金融業界のノウハウを学ぶ。2007年 独立して、株式会社フォーチュンフィールド設立。富田FP事務所として、独立系FP、独立系IFAを含め、証券会社、保険会社、保険代理店、にて金融業界の知識を活してプロフェッショナルの事業を行う。
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