少子高齢化が進み、年金制度への不安がすべての年代において高まっている。
2、30代の若年層は老後に年金がもらえないのではないかという不安、4、50代は年金だけでは暮らせないのではないかという不安、年金受給者世代にとっても年々受け取る年金額が減額され、今後の生活の維持や医療・介護による出費など不安が絶えない。
政府としても国民の自助努力による年金準備を促しており、その一つとして、税金が優遇される確定拠出年金の導入が始まった。
企業年金においては、適格退職年金が廃止され、厚生年金基金は代行返上や解散が相次ぎ、現在は確定拠出企業年金や確定給付企業年金が主流となっている。
中でも確定拠出年金は会社が運用責任を負わなくてよく、経費も少ないため、今後ますます導入が進むだろう。
個人型確定拠出年金においては、2017年に加入範囲が拡大し、iDeCo(イデコ)の愛称やロゴができたことなど、知名度が上がり普及しつつある。テレビ番組での特集や金融機関での勧誘などの影響を受け、加入を考える人も多いだろう。
しかし、メリットばかりとは限らない。今回は確定拠出年金を始める上で知っておくべきデメリットについて紹介する。
この記事でわかること
確定拠出年金の制度とメリット

確定拠出年金とは、公的年金(国民年金および厚生年金)の不足を補完するため、企業や個人が独自で積み立てる私的年金制度だ。私的年金には確定拠出年金のほか、確定給付年金、厚生年金基金、国民年金基金などがある。
確定拠出年金には個人型と企業型が存在するが、いずれも公的年金のような賦課方式とは異なり、拠出した資金は自分で管理・運用し、自分が老後に受け取ることができる。
確定拠出年金に加入するとどのようなメリットがあるのか、まずはメリットについて確認していこう。
個人が支払う場合には掛け金を全額所得控除できる
個人型確定拠出年金(以下、イデコという)の最大のメリットは掛け金を全額所得控除できることだろう。
自営業や会社員など属性により拠出できる上限金額が異なるが、所得控除による税制優遇のメリットは大きいだろう。例えば自営業など国民年金の第一号被保険者ならば毎月68,000円、年間で816,000円まで拠出することができる。
仮に所得税率が20%ならば、163,200円の還付が得られる。同様に住民税からは81,600円の還付が得られ、合計すると244,800円の税金を節約できる。
個人年金保険も掛け金を所得控除できるが、控除対象となる掛け金は8万円まで、所得税の控除は最大4万円(住民税の控除は最大2.8万円)と、一定金額に限られる。
企業型確定拠出年金(以下、企業型DCという)の場合、会社が従業員のために拠出し、その掛け金は全額損金に算入される。この場合、従業員にとって節税のメリットはないが、会社が導入している確定拠出年金にマッチング拠出(従業員が追加で拠出)することができる場合、従業員が拠出した金額は全額所得控除となる。
運用による利益が非課税
一般の金融商品の場合、配当や売買による利益に対し20.315%の税金が課される。しかし、確定拠出年金ではこれらの運用による利益に対し税金を課されることはない。
つまり、100万円の利益が出た場合、一般の金融商品ならば20万円程度の税金を差し引かれるが、確定拠出年金ならば得られた利益から税金を引かれることなく、そのまま運用することができる。
例えば、AファンドからBファンドへ乗り換え(スイッチング)する場合、通常の投資信託ならば運用益が出ていれば課税され、税引き後の資産を運用することになるが、確定拠出年金ならば運用益に課税されることはない。
運用コストが安い
確定拠出年金で運用する商品は、投資信託、定期預金、保険などがある。一般的に投資信託を購入する場合、購入時に手数料が生じるが、確定拠出年金では購入手数料が掛からない。
つまり、確定拠出年金ならばスイッチングやリバランスを何度行っても、税金や購入手数料を取られることはない。ただし、数は少ないがファンドによっては信託財産留保額が設定されているものがあるので、注意しよう。
また、信託報酬も一般の投資信託より低めに設定されている。一般的な投資信託の場合、信託報酬は年率1.5%(税別)程度のものが多いが、確定拠出年金の場合、年率1%(税別)以下がほとんどだ。
信託報酬は購入時手数料とは異なり、保有している間毎日発生する。つまり保有期間が長期になるほど手数料(信託報酬)の額は大きくなるのだ。信託報酬においては、たった0.1%の違いでも運用の成果に大きな影響を与えることになるため、少ないに越したことはない。
ポータビリティ
昨今、雇用の流動化は高まっている。
確定拠出年金にはポータビリティがあり、転職しても継続して資産形成をすることができる。つまり、企業型DCに加入していた人が転職し、転職先も企業型DCを導入している場合、転職先のDC制度に資産を移管することができる。
転職先がDC制度を導入していない場合はイデコへの移管や、確定給付年金を導入している場合はその制度へ移管することも可能だ。
年金資産が個人で管理されていることも確定拠出年金のメリットと言えるだろう。なぜなら、会社の退職金制度が、一般的な社内で積み立ての場合、短期の自己都合退職では退職金が支払われない場合や、会社の経営状況が悪くなってしまったら退職金が受取れない場合がある。
確定拠出年金の場合、拠出した掛け金は社外で管理・運用されるため、基本的に会社の経営状況や経営者の判断で積み立てた年金資産を操作されることはない。
受取時も税制優遇が受けられる
確定拠出年金を受け取る場合、一時金で受け取るならば退職所得控除、年金で受け取るならば公的年金控除を受けることができ、受取時にも税制優遇が受けられる。
一時金または年金で受け取った場合の税制等については、2章で説明する。
また、加入者が高度障害状態になった場合には、障害給付金として年金または一時金を受けることができ、どちらにおいても非課税だ。
亡くなった場合には遺族が死亡一時金として受け取ることができ、相続税の課税対象となる。
確定拠出年金の給付の種類は3つ

確定拠出年金の受け取り方は3種類あり、一時金、年金、または一時金と年金の併用のいずれかから選ぶことができる。それぞれの受け取り方における給付金額や税金、手数料などについて見ていこう。
一時金として受け取る場合
原則、60歳に到達したら、70歳に到達するまでの間に、一時金として年金資産を一括で受け取れる。給付金を一括で受けるためには給付事務手数料が一回生じる。
給付金をすべて受け取ってしまえば、以降口座管理手数料はかからなくなる。受け取りにかかる手数料は一時金受け取りが一番少なくなる。
受取時の税金について、一時金で受け取る場合には退職所得として扱われる。退職所得の計算は次の通りだ。
退職所得 = (受取金額 - 退職所得控除) × 1/2
退職所得は分離課税となり、金額に応じた所得税率(超過累進課税)を乗じ計算する。
退職所得控除の算出に使われる勤続年数とは、個人型および企業型の掛け金を拠出した期間の合計を言う。
勤続年数(=A) | 退職所得控除 |
20年以下 | 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A - 20年) |
※ 1年未満の端数があるときは1年に切り上げる。
例えば、確定拠出年金で掛け金を30年間支払った場合、退職所得控除は1,500万円となる。つまり、1,500万円までならば税金はかからないということだ。
ただし、勤務先に退職金制度がある場合、退職金と確定拠出年金の一時金額を同時に受け取るとそれらの額は合算される。退職所得控除は退職金と確定拠出年金のそれぞれで受けることはできないが、勤続年数は期間が長い方を適用し退職所得控除を計算する。
しかし、退職金と確定拠出年金の両方を同時に受け取れば、退職所得控除を超える場合が多いだろう。税金を考えると退職金と確定拠出年金を同時に受け取らない方が良い。これらを別の年に受け取る場合も勤続年数を重複することはできないが、退職所得の計算上、受取金額を1/2にすることができ、税率は金額が少ないほど低くなるので節税できるだろう。
なお、退職金には5年ルールというものがあり、前回退職金(確定拠出年金を含む)を受け取ってから5年以上空いていればまた勤続年数を通算できる。確定拠出年金を受け取った後、5年以上開けて退職金を受け取ることで節税することは可能だ。
参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm
年金として受け取る場合
年金での受け取り方法は原則5年から20年の有期年金となる。運用機関によっては終身年金も選択できるが、長生きしなければ元が取れない可能性もある。年金受け取りを選択すると、受給開始後も年金原資の残額が非課税で運用されるので、一般的に一括で受け取るより受取総額が増えるだろう。
ただし、運用期間中は口座管理手数料がかかるだけでなく、年金給付を受けるたびに給付事務手数料がかかる。
年金で受け取る場合の税金は、雑所得扱いとなり総合課税だ。
公的年金等にかかる雑所得 = 受取年金額 - 公的年金等控除額
公的年金等控除の額は次の通りだ。
年齢 | (a)公的年金等の収入金額の合計額 | (b)割合 | (c)控除額 |
65歳未満 | 公的年金等の収入金額の合計額が700,000円まではゼロ | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | 公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円まではゼロ | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
ここで注意したいのは、年金受け取りにすると総合課税となり、他の所得と合算し税金を計算する。ご存知の通り、所得税は超過累進課税により、所得金額が大きくなるに従い税率が上がる。
公的年金控除は65歳以上になると金額が増加するが、公的年金の受給が開始することを考慮した方が良いだろう。なぜなら、公的年金控除は確定拠出年金と老齢基礎年金・老齢厚生年金のそれぞれから差し引くことができるわけではない。
確定拠出年金および公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を合算した金額から公的年金等控除額を差し引くのだ。
つまり、60歳で退職し老齢年金が支給されるまでのつなぎとして確定拠出年金を年間120万円受け取る場合、雑所得は50万円(120万円-70万円)となる。
しかし、65歳から老齢基礎年金(78万円)と確定拠出年金(120万円)を受け取る場合、雑所得は78万円(78万円+120万円-120万円)となり課税所得が増える。
老齢厚生年金も受け取る場合にはさらに課税所得が増え、給与所得などその他の所得があるならば、それらと合算し税率を乗じることになるのだ。
それだけではない、国民健康保険料や介護保険料も増加することになる。確定拠出年金を受け取る際には税制面なども考慮し計画的に受給した方が良いだろう。
一時金と年金を併用して受け取る場合
確定拠出年金は一時金と年金、両方での受け取りも選択できる。前々項で説明したように、一時金で受け取る場合には手数料が最も少なくなる。また税金も退職所得控除により課税所得を大幅に削減できる。
しかし、60歳まで務めれば企業からの退職金をもらえるだろう。退職所得控除は退職金と確定拠出年金のそれぞれに使えるわけではなく、退職所得控除を超える金額は課税対象となる。
年金で受け取る場合前項で説明したように、年金原資は非課税で運用され受取金額が増える。ただし、給付事務手数料や口座管理手数料がかかる。
また、65歳になると年金を受給できるが、公的年金と確定拠出年金のそれぞれで公的年金等控除を受けることはできない。
一時金受け取りと年金受け取りの長所・短所を理解し、それぞれの長所を最大限に活用できるよう、一部を一時金で受け取り、残額を年金で受け取る方法も良いだろう。
個人型・企業型の違い

同じ確定拠出年金でもイデコと企業型DCでいくつか異なる点がある。それぞれの違いを見ていこう。
制度上の違い
イデコの場合、個人が自ら金融機関を選んで加入する。掛け金や運用方法も自ら選択し運用および管理を行う。掛け金は口座振替等により支払う方法が一般的で、前述の通りその年に拠出した金額は全額所得控除となる。
企業型DCの場合、会社が金融機関を選んで契約し、従業員は強制加入となる。掛け金の額は規約に則り会社が従業員ごと決め拠出するが、運用するのは従業員だ。掛け金は従業員ごとに管理し、会社がまとめて金融機関に払い込む。前述の通り、会社が拠出する掛け金は損金扱いとなり、マッチング拠出をする場合、従業員が拠出する掛け金は全額所得控除となる。
掛け金上限額の違い
イデコは加入者の属性により掛け金の上限額は異なる。
年金 | 具体例 | 掛け金上限額 |
第一号 | 自営業・フリーランス | 月額6.8万円(年間81.6万円) |
第二号 | 企業型DC等がない会社員 | 月額2.3万円(年間27.6万円) |
企業型DCがある会社員 | 月額2.0万円(年間24.0万円) | |
確定給付年金等がある会社員 | 月額1.2万円(年間14.4万円) | |
公務員・共済加入者 | ||
第三号 | 専業主婦(主夫)等 | 月額2.3万円(年間27.6万円) |
2018年1月から年払いや半年払いができるようになった。それにより年の途中で加入した場合でも、年間の上限額まで掛けることができ所得控除を受けられる。
企業型DCの上限額は次の通りだ
退職金制度 | 掛け金上限額 |
確定給付年金や厚生年金基金がない | 月額55,000円 |
確定給付年金や厚生年金基金がある | 月額27,500円 |
マッチング拠出ができる場合、企業が負担する掛け金と従業員が拠出する掛け金の合計額が上図の金額以下であることを求められる。また、企業型DCは会社が掛け金を負担することが前提であることから、従業員が拠出する金額は会社が負担する金額を上回ることができない。
口座管理料など手数料の違い
イデコの場合、加入時手数料、口座管理手数料、給付事務手数料等を加入者自身が負担することになる。
企業型DCの場合、導入時費用や事務手数料、運営管理費用など、金融機関によりことなるが、一般的に会社がそれを支払い、従業員が負担することはない。
その他、「確定拠出年金の制度とメリット:運用コストが安い」の項でも説明した通り運用する商品により信託報酬が生じるが、一般の投資信託に比べると安価だ。
運用商品
イデコの場合、自分で金融機関を選び加入することとなるため、運用商品の種類は金融機関次第となる。金融機関を選ぶときは、商品の多さや手数料等を比較し選ぶと良いだろう。
企業型DCの場合、会社が導入した金融機関のDC制度により運用商品が決まる。イデコと違って選択肢が絞られることが多い。
個人型確定拠出年金のデメリット

ここまで確定拠出年金のメリットについて見てきたが、個人型に絞りデメリットを確認してみよう。
原則60歳まで引き出すことができない
確定拠出年金は個人型・企業型問わず、基本的に60歳までは積み立てたお金を引き出すことができない。また、加入期間は10年以上必要であり、10年に満たない場合は受取可能年齢が繰り下げられる。
加入期間 | 10年以上 | 8年以上
10年未満 |
6年以上
8年未満 |
4年以上
6年未満 |
2年以上
4年未満 |
1月以上
2年未満 |
開始年齢 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 |
また、中途解約もできないため、家計が苦しい場合でも積み立てた資金を引き出すことはできない。積み立てを停止することはできるが、保有している間手数料がかかり続ける。
諸手数料がかかる
イデコの場合、加入時・移管時手数料、口座管理手数料、給付事務手数料等を加入者自身が負担することになる。加入時手数料は国民年金基金連合会に支払う費用で2,777円(税込)のほか、金融機関によっては別途手数料が生じる。
また、加入中も口座管理手数料がかかる。積み立てる場合も、積み立てず運用のみにする場合も、手数料が発生し、金額は金融機関により異なるが、積み立てを行う場合、年間6,000円程度、運用のみの場合、年間4,000程度が一般的だ。
受け取る際には1回あたり432円(税込)程度の給付事務手数料がかかる。
老後に受け取れる金額が確定しない
前述の通り、運用は自己責任だ。定期預金など元本保証型なら損失が出ることはないが、増える可能性もない。元本保証型の場合、現状、金利が付かないから、手数料だけが取られ続けることになるだろう。
積み立てを行わず運用のみの場合、手数料を引かれるため、保有するほど元本が減っていくだろう。それならば、時間を味方につけ長期間、市場を見ながら運用する方がよい。
投資をすれば複利の効果もあり資産は増えるだろう。しかし、元本保証がないので、運用商品は慎重に選ぶことが大切だ。
特別法人税がかかる
特別法人税とは確定拠出年金、確定給付年金、厚生年金基金などの積立金に対し、年率1.173%課せられる税金だ。バブル崩壊の影響から企業年金の運用が悪化したことにより1990年から2017年まで凍結されることになった。現在でも低金利が続いており景気が回復したとは言い難いため、凍結期間は延長し2020年3月末まで特別法人税はかからない。しかし、将来、特別法人税が復活した場合、積立金の総額に対し、毎年課される税金となるため負担は大きくなるだろう。
企業型確定拠出年金のデメリット

企業型DCのデメリットは次の通りだ。
転職・離職しても60歳まで引き出せない
イデコと同様に企業型DCも60歳までは原則引き出すことができず、加入期間が10年に満たない場合は受給開始年齢が繰り下げられる。
転職・退職時に企業型DCを放置すると大損
転職または退職などにより、企業型DCの加入資格を喪失したら6ヶ月以内に移管しなければならない。移管手続きを忘れて放置すると国民年金基金連合会に自動移管されてしまう。自動移管されると運用は停止される。運用をしなくても手数料が生じるため、年金資産は減り続けることになる。
また、国民年金基金連合会に移管されている間は老齢給付金の受給要件となる加入期間に算入されないため、受給開始が遅くなることがある。転職や退職をする際は、年金資産を転職先の企業年金またはイデコに移転することを忘れてはならない。
転職・離職し資産を移転するたびに利益確定
前述の通り、勤めていた会社を退職または転職したとき、企業型DCを移管しなければならない。移管する際、手数料が生じるだけでなく、投資信託は一旦売却し現金化した後、移管先のファンドを買い付けることになる。
利益がでているなら売却しても良いが、そうでない場合、移管するたびに損失を確定することになるだろう。当然ながら損切りを繰り返せば資産が増えることはない。
確定給付などと違い、受取金額がわからない
確定給付型企業年金は、規約により将来受け取れる金額が確定している。運用責任は会社が負い、不足が生じれば会社が補填する。そのため、リタイア後の生活を容易にイメージでき、計画的な資産形成が出来るだろう。
一方、企業型DCの場合、会社は掛け金を拠出するのみで運用責任を負わない。そのため、将来の受け取る金額がわからない。運用は従業員自身の責任となるため、資産運用や金融商品、日本や世界の経済を学ぶ必要がある。
運用機関を自分で選べない
企業型DCは会社が金融機関を選ぶため、その金融機関が提供する金融商品しか選択できない。運用商品の充実度は会社が選んだ金融機関次第となる。
ただ、どの金融機関でも一般的に、元本保証型、ETFなどのインデックス型、バランス型、アクティブ型を取り揃えているので安心してほしい。どうしても他の商品で運用したい場合は、イデコを行うか、一般の投資信託を購入すると良いだろう。
加入する・しないの考え方

確定拠出年金に加入すると所得控除などのさまざまなメリットがあるが、同時にデメリットも生じる。確定拠出年金のメリットを活用できない人は加入しない方が良いだろう。ここでは、加入した方が良いケース、しない方が良いケースについて紹介する。
積み立ての目的が老齢年金の上乗せであること
確定拠出年金を引き出せるのは原則60歳以上である。国が推奨する制度とは言え、確定拠出年金に積み立てし過ぎて手元にお金が残らないということにならないように注意しよう。子どもの教育資金や住宅購入の頭金、自動車の買い替えなど、老後以外にもさまざまなライフイベントでお金がかかる。これらのライフイベントを考慮しつつ余裕資金を積み立てると良いだろう。
手数料を上回る節税効果が得られること
前述の通り、確定拠出年金による節税効果は拠出時に全額所得控除、運用益が非課税、受取時の控除、この3つだ。中でも、拠出時の所得控除は納税額によっては効果が大きい。仮に定期預金に積み立て金利が付かなかったとしても、高所得者にとっては節税効果が大きいため、それだけでもやる甲斐はあるだろう。
しかし、掛け金全額所得控除のメリットが得られない専業主婦(主夫)や住宅ローン減税で所得税等がかからない人は確定拠出年金が向いているとは言い難い。
また、納税者だが、収入が少ないため納税額が少ないような場合や、掛け金が少ないため所得控除も少ないような場合もメリットは少ない。確定拠出年金は諸々の手数料が生じるため、運用で利益が出ていなければ手数料により元本を減らすことになる。
納税額がない、または節税効果が少ない場合、つみたてNISAを検討してみてはどうだろう。つみたてNISAも運用益は非課税となり基本的にノーロードだ。信託報酬も低めに設定されており、原則、信託報酬と信託財産留保額以外かからない。
元本保証型でなく投資を行うこと
投資の初心者にとって元本保証がないことに不安を感じるだろう。しかし、この低金利下では投資をしない限りお金は増えない。確定拠出年金の場合は増えないだけでなく、手数料で資産が目減りすることもあるため、元本保証型より投資をした方が良い。
また、一般的な投資信託の場合、購入時手数料がかかり投資額に比例し大きくなる。一方、確定拠出年金の場合、購入時手数料はかからず、諸手数料は拠出額によらない。
つまり、拠出額が多いほど手数料負担が薄まるのだ。掛け金はもちろん家計の負担にならない範囲だが、ある程度大きく積み立てた方がメリットを享受できるだろう。
まとめ
確定拠出年金には、節税のメリットがある一方で、中途解約や途中引き出しができないなどのデメリットがある。
確定拠出年金に加入するならライフプランを考慮し掛け金を決めないと、将来のライフイベントを乗り越えられない可能性がある。加えて、積み立てを停め運用だけでも手数料が発生することも留意しておこう。
資産形成は確定拠出年金以外でもできる。積み立てを検討の際には多角的な視点を持ち比較することが大切だ。確定拠出年金に加入するなら、無理のない範囲で拠出し、自分の老後のために細く長く行うと良いだろう。

【記事執筆】富田FP事務所 代表 ファイナンシャルプランナー
2019年度MDRT成績資格会員(8年連続MDRT成績資格会員)
ゴールドマン・サックス証券会社等、複数の金融機関にて勤務し、金融業界のノウハウを学ぶ。2007年 独立して、株式会社フォーチュンフィールド設立。富田FP事務所として、独立系FP、独立系IFAを含め、証券会社、保険会社、保険代理店、にて金融業界の知識を活してプロフェッショナルの事業を行う。
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